忍者の師弟
才蔵(♂) さいぞう。師匠。中忍(ちゅうにん)。20代後半〜30代前半。
常識人。指導者としても優秀。真面目で頭が固い。
藍丸(♂) らんまる。弟子。下忍(げにん)。10代〜20代前半。
高い才能を持つ忍者だが、性格が自由すぎて問題が多い。人の話を聞かない。
※藍丸は女性が少年声で演じてもOKです。
里長(♂) さとおさ。隠れ里の長。上忍(じょうにん)。年齢30代〜60代。
威厳がある雰囲気であれば大丈夫なので、年齢は気にせずに。
敵忍者(♂) 追っ手の人。
―配役―男性3(※藍丸は女性が少年声で演じてもOKです)
才蔵(♂)
藍丸(♂)
里長(♂)+敵忍者(♂)
本編スタート
シーン・隠れ里、里長の屋敷
里長:藍丸、こちらが今日からお前の師匠となる、才蔵殿だ。
お前のために、遠いところからお越し頂いた。挨拶せい。
藍丸:ウッス! オイラ、藍丸って言います!
才蔵:才蔵だ。よろしく頼む。
藍丸:よろしくお願いシャッス!
里長:すみませんな、才蔵殿……。
この通り、こやつは目上の人間に対する口の利き方も知りませぬ。
一から鍛えなおすつもりで叩き上げて頂きたい。
才蔵:ご安心を。元よりそのつもりで参りました。
里長:では、才蔵殿。藍丸の経歴について、私から簡単に説明させて頂く。
才蔵:簡単には伺っております。
何やら問題が多く、この里の中忍では扱いきれない下忍だとか……。
里長:と、言いますか……、
藍丸が下についた中忍たちが、ことごとく悲惨な末路を辿っておりましてな……。
才蔵:ほう……、どのような?
里長:半数が謎の失踪をし、もう半数は精神を病んで廃人となってしまいましてのう。
才蔵:しまいましてのう……って、そんな話は聞いてござらんぞ!
里長:ほっほっほ。この話をすると、誰も引き受けてくれませんでな。
才蔵:当たり前だ! 誰もやらんわ!!
藍丸:そんなぁ! オイラを捨てるんですか!!
才蔵:捨てるも何も、まだ拾ってもおらんわ!!
藍丸:捨てるんだ……。
オイラがまだよちよち歩きもできない頃、父上がそうしたように……。
才蔵:お前の人生に何があったか知らんが!! そんな唐突な泣き落としが効くと思うな!!
里長:藍丸、お前は少し黙っておれ。
藍丸:だってぇ……父上ぇ……
才蔵:父上ここにおるではないか!!!
里長:藍丸はこの通り、少し抜けた所があるが、忍びとしては高い才能を持っておる。
このまま下忍で終わらせるのは惜しい逸材なのだ。
……後生じゃ、才蔵殿。どうかそなたの力で、藍丸を育て上げて欲しい。
才蔵:今の話を聞いたかぎり、とても自信がありませんが……。
里長:才蔵殿は優秀な下忍を何人も育ててきた実績がある。
それを見込んで頼んでいるのじゃ。
報酬もたんまりと出す。この通りじゃ……。
才蔵:顔を上げてくだされ……分かりました。
では、試しの期間を設けて頂き、その間に、やはり無理となったら辞めさせて頂く。
そういうことであれば、お引き受け致しましょう。
里長:おお、そうでござるか。引き受けてくださいまするか。
才蔵:あくまで、試し、ですぞ。
里長:分かり申した。
しかし才蔵殿ならば、きっとこの藍丸も、良い忍びに育てられるはずじゃ。
才蔵:ご期待にそえるよう、微力を尽くします。
シーン・隠れ里、修行場
才蔵:では藍丸。今日からお前を、俺が一から鍛えなおす。
藍丸:ウッス! よろしくお願いシャッス!
才蔵:うむ。忍びの道は一日にしてならず。
日々精進を重ねることが大事であると心せよ。
藍丸:ウッス!
才蔵:ではまず、忍者にとって大事な跳躍力の修行だ。
ここに麻を植えてある。これを毎日、飛び越えるのだ。
藍丸:え? 麻、っすか……? どこに植えてあるんすか?
才蔵:ここだ。ほら、芽が出ているだろう?
藍丸:あ……ああっ、このちっこいのっすか! え……これ飛び越えるんすか?
才蔵:そうだ。
藍丸:……ぷっ……ぶひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!
(すごいバカにしながら)これ飛び越えるんすか?w マジすか?ww これっすか?www
(ちょっとキレながら)あの、冗談はいいんで、真面目にやってもらえます?
才蔵:そういう修行なのだ!!
麻は成長が早いから、最初は簡単でも、次第に難しくなってくる。
まともな修行を受けてこなかったとは聞いていたが……そんなことも知らんのかっ。
藍丸:へぇ……才蔵さんって、物知りっすねぇ!
才蔵:お前が無知なだけだ。いったい今まで、どんな修行をしてきたのだ?
藍丸:そうっすねぇ……修行っていうか、オイラ、天狗に育てられたんで、
いろいろと術を叩き込まれたっすね。
才蔵:……て、天狗?
藍丸:ええ。オイラ捨て子だったんで、山で天狗に拾われて育てられたっす。
で、オイラが十三の時に、ここの里長の養子になって、今に至るっす。
才蔵:そうだったのか……。
ではまともに教えを受けたのは、その天狗からだけなのだな?
藍丸:そうっすね。師匠って呼べるのは……、天狗のオヤジだけっすかね。
才蔵:天狗か……俺はそのような者に会ったことはないが……。
しかし藍丸、今の師匠はこの俺だ。一人前の忍びとなりたいならば、
天狗から教わったことはひとまず忘れて、俺の言う事に従って行動せよ。
藍丸:ウッス! 了解ッス! 才蔵さん!
才蔵:うむ。
才蔵N:こうして始まった俺と藍丸の師弟関係……その日々は、想像以上に悲惨なものだった。
シーン・隠れ里、里長の屋敷
藍丸:才蔵さん! できましたよ!
才蔵:ん……なんだ、食事中に。これは……薬、か?
藍丸:そっす! 才蔵さんから作り方を教わって、毒消しを作ったっす!
里長:ほう、才蔵殿は薬草にもお詳しいのですなぁ……――ブホォッ!
才蔵:さ――里長! いかがなされたっ! こ、これは……毒を盛られたか!
藍丸:父上! これを!!
里長:ゴフッ、オェエエ、オグェ……うぐっ……ごくごく……はぁ、はぁ、ふぅ……
才蔵:藍丸が作った毒消しのおかげで、なんとか落ち着いたようだ……。
藍丸:さっすが才蔵さん直伝の毒薬と毒消しっすね! 効果抜群じゃないすか!
才蔵:毒薬と毒消しって……えっ……お前が盛ったのかよ!! 里長で試すなよ!!
里長:ごほっ……はぁはぁ……さすがじゃな、藍丸。
気づかれぬように毒を盛る、その手際の良さ……まこと、忍者の資質を持っておる。
才蔵:いや違うでしょ!! 怒るとこでしょここは!! 褒めてどうすんの!!
どんだけ藍丸に甘いんだあんたは!!
才蔵N:……こういった、ありえないことが日常的に起こる日々。
藍丸の師匠という役目を試す期間が終わろうというとき、俺の心は決まっていた。
里長:自分の里へ戻る……ですと!?
才蔵:申し訳ありませんが、自分にはとても、藍丸の師匠は務まりませぬ。
里長:いったいどうして……!? 何か理由があるなら、正直に申してくだされ!
才蔵:そうですね……。毒を盛られること二十三回。
内訳は、笑い薬が十五回、痺れ薬が三回、腹下しが五回。
それと、吹き矢で射られること五十二回。これは、主に寝ている時にですな。
矢尻に毒が塗られてあったこともあります。
それと、落とし穴に落とされること十七回。
穴の底に、先の尖った竹が埋められていること八回、
毒蛇が放たれていること七回。肥溜めになっていること二回。
肥溜めの回数が少ないのは、作るときに臭いからと言っていましたな。
それと……
里長:もうよいもうよい……。才蔵殿のお気持ちは、痛いほど分かり申した。
才蔵:では、拙者はこれにて。
里長:待たれい!! 頼む、これが最後じゃ!! 最後の願いじゃ!!
最後に一度だけ、藍丸との任務に同行して頂きたい!!
才蔵:任務……ですか。
里長:知ってのとおり、藍丸は忍者の素質はあるものの、評判は最悪じゃ。
御大名様たちも、藍丸だけは任務から外せと、名指しで断りを入れてくるほどじゃ。
このままでは……藍丸には先がない。
だからどうか、最後に一度だけ、共に任務をやり遂げてもらえないじゃろうか。
任務が失敗でも、成功でも、どちらにしてもこれで最後じゃ。
才蔵:ううむ……。
里長:なに、難しい任務ではない。……ここに、とあるお殿様から預かった文(ふみ)がある。
この文を矢文(やぶみ)にして、目的の城の天守閣に直接届けるだけじゃ。
才蔵:……分かりました。これが、本当に最後ですぞ。
里長:かたじけない……。よろしくお頼み申す。
シーン・城
才蔵:闇に紛れて堀を越え、石垣を登り、よくぞここまでついてきた、藍丸。
藍丸:余裕っす。体力には自信あるんで。
才蔵:ここからが本番だぞ。矢文(やぶみ)の用意はいいか?
藍丸:うっす。
才蔵:藍丸……、お前は色々と問題が多い忍びだ。主に性格面でな。
だがな、お前も忍びなら、与えられた任務はきちんとこなせ。
さもなくば……
藍丸:わーってます。この任務を失敗したら、もうオイラは後がねぇ。
お世話になってる才蔵さんのためにも……今日はオイラ、マジでやりますよ。
才蔵:そうか、ならばもう何も言うまい。
おっと……見ろ藍丸、天守閣に城主の姿がある。
矢文を放つ用意をしろ。
藍丸:ウッス!
才蔵:……放てっ!
SE:ズシュ!(人が矢で射られる音)※SEなければ、敵忍者役の声で
藍丸:おっしゃ!
才蔵:えっ……矢文が城主のこめかみに……えっ……?
藍丸:大当たり〜!!
才蔵:大当たりじゃねーよ!! なんで城主に当ててんだよ!?
藍丸:いや、どこに当てろって指示なかったんで……。
才蔵:矢文だよ!? 矢文!! 人に当ててどうするんだよ!?
藍丸:……まずかったっすか?
才蔵:まずいよ!! まずすぎだよ!!
文(ふみ)が血で真っ赤じゃん! あれもう読めないじゃん!
どうすんだよアレ!! 殿様から預かった大切な文だぞ!!
藍丸:才蔵さん……ご安心を。文(ふみ)は無事っす。
才蔵:えっ!? こ、これは確かに殿から預かった文……。
なぜこれがお前の懐(ふところ)に?
さっき矢に結んだ文は何だったのだ?
藍丸:あれはこの前、神社に行ったとき引いたおみくじの、大凶のやつっす。
才蔵:なんでおみくじを矢文に結んでるの!?
藍丸:いやぁ、おみくじって大吉以外は結ばないといけないって聞いたんで。
才蔵:矢文に結ぶなよ!! 矢文には文を結ぼうよ!!!
藍丸:あーっ! そうだったんすかぁ! そのための文だったんすか!
才蔵:そこから!? そこから分かってなかったの!?
……もういい。とりあえずその文を矢に結んで、その辺の柱に放て!
藍丸:ウッス!
才蔵:すぐに追っ手がかかる! 逃げるぞ!
藍丸:ウッス!
シーン・森
才蔵:はぁ、はぁ……この森まで逃げられれば、ひとまず安心か。
藍丸:少し休みます? オイラまだ走れますけど。
才蔵:ったく……お前は体力と運動能力は抜群なのだがな……。
――ハッ! 何奴(なにやつ)!?
敵忍者:くっくっく……。
才蔵:追っ手か! クッ……走るぞ藍丸! ついて来い!!
藍丸:ウッス!
敵忍者:逃がさんぞ!
才蔵:藍丸、奴に気づかれぬようにマキビシをまけ!
藍丸:了解っす!
敵忍者:待てええええっ!
才蔵:クッ、踏まんな……マキビシを持っているだけまけ!
藍丸:ウッス!
敵忍者:逃がさんぞぉおおおっ!
才蔵:踏まんな……。藍丸、ちゃんとまいたか?
藍丸:はい、全部まいたっす!
才蔵:……。藍丸、お前、本当にマキビシまいたか?
藍丸:はい、持ってるマタタビ、全部まいたっす!
才蔵:ま……マタタビ?
藍丸:くっ……どうして足が止まらないんだ……!
才蔵:どうりで止まらないはずだよ! マタタビ踏んで足が止まるか!!
藍丸:ネコには効くのにっ……。
才蔵:ネコにしか効かないんだよ!!
敵忍者:フハハハハ! 追いついたぞ! 観念しろ!
才蔵:クッ……藍丸、下がっていろ。ここは……
藍丸:いいや! オイラが奴の足止めをするッス!
その間に才蔵さんは先に行ってください!
才蔵:藍丸ッ……。
藍丸:オイラはいっつも才蔵さんに迷惑をかけてばかりだ。
こんな時くらい、カッコつけさせてください。
……おいお前! オイラが相手だ! ハァアアアアーッ!
才蔵:藍丸! 待てっ!!
敵忍者:正面から向かってくるとは甘いな小僧! 食らえ!
才蔵:手裏剣だ! 藍丸! よけろ!!
藍丸:クッ……変わり身の術ぅうううっ!!
才蔵:へ!? ――ぐはぁっ!!!
敵忍者:なっ……!?
藍丸:へっ……甘く見んなよ。オイラも忍者の端くれ。術の一つや二つ使え……
才蔵:だからってぇ!!!! 変わり身で俺と変わるなよっ!!
鎖帷子(くさりかたびら)着てなかったら死んでたぞ!!!
敵忍者:見事な変わり身だな、小僧。
才蔵:見事すぎるだろ!! 落ち着いた感想言ってるんじゃないよ!!
ほとんど妖術の域だろこれ!!
藍丸:へっ、才蔵さん譲りの術の数々、今からたっぷり見せてやらぁ……
才蔵:教えてないよこんなの!! どうやったんだよコレ!?
敵忍者:ほう、それは楽しみだ……。
才蔵:お前ら俺を無視して話を進めんな!!
敵忍者:食らえ! 火遁(かとん)の術!!
藍丸:チィッ! 変わり身の術!!
才蔵:あっつ!! あああっつ!!!
敵忍者:フッ、同じ手は通じんぞ!!
藍丸:なっ――変わり身前に才蔵さんがいた位置に手裏剣を!? クッ!!
敵忍者:むっ……刀で上手く防いだか。やるな。
藍丸:そっちこそ。こりゃ大技で勝負しねーと夜が明けそうだ。
――行くぜっ!! ハァッ!!
敵忍者:フッ、大技というから期待したのに、クナイを足元に放るだけとは……笑わせる!
藍丸:飛んだな! 今だ! 食らえ――大車輪!!!
才蔵:なっ……藍丸のやつ、あんな大きな手裏剣をどこに隠し持っていた!?
藍丸:これで終わりだっ!
敵忍者:むぅううううッ……――変わり身の術ぅううううっ!!!!
才蔵:お前もできんのかよぉおおおお!!!!! うぉおおおおおおおっ!!!!
藍丸:才蔵さぁあああああん!! よけてえええええーっ!!!!
才蔵:おおおわぁああああっ! ……あ、危なかったッ……!
藍丸:よ、良かったぁ……。
敵忍者:フッ……今のはさすがにヒヤっとしたぞ。
才蔵:一番ヒヤっとしたのは俺だよ!! 何なんだよお前ら!!
藍丸:本当にヒヤっとするのはこれからだ!
行くぞ……抜刀術――カマイタチ!!
敵忍者:これは……風の刃か!? ――変わり身の術!
才蔵:うおおおっ! 俺の鎖帷子がボロボロに……あっぶなっ!
藍丸! 奴も変わり身を使えるのだ! 考えて攻撃せんと……
敵忍者:土遁(どとん)!
藍丸:変わり身!
才蔵:ぶへぇっ!!
藍丸:木遁(もくとん)!
敵忍者:変わり身!
才蔵:ごはぁっ!!
敵忍者:水遁(すいとん)!
藍丸:変わり身!
才蔵:ぶはぁっ!!
藍丸:石遁(せきとん)!
敵忍者:変わり身!
才蔵:うごぉっ!!
敵忍者:はぁ、はぁ……やるな。
藍丸:はぁ、はぁ……お前もな。
才蔵:お……お前らなぁあああッ……!
藍丸:このままじゃ才蔵さんが先におだぶつだ。
これで終わりにしてやる……!
リン、ピョウ、トウ、シャ……
才蔵:藍丸……印を結んで何を……!?
敵忍者:させるかぁ! 大火遁(だいかとん)の術ぅうううっ!!
藍丸:才蔵さん、すんません! 変わり身の術!!
才蔵:クッ――大水遁(だいすいとん)の術!!!
敵忍者:なっ……火を水で防いだ……だとっ……!?
藍丸:さっすが才蔵さんだぜぇ!
才蔵:お前らの変わり身にはもう慣れたわ! 怒る気すら失せたわ!!
藍丸:カイ、ジン、レツ、ザイ、ゼンッ……!
食らえぇえええっ!! 雷遁(らいとん)の術ッ!!!!!
敵忍者:雷遁……雷だとッ!? しかし当たらなければ意味がない!
変わり身ぃいいいいいいいっ!!!
才蔵:か、雷は防げねえええええっ!!!! 無理ぃいいいいい!!!!
……って、アレ? 雷、落ちてこないが……。
敵忍者:不発、か……? ――グハァッ!!!!!!
才蔵:な、なんだ!?
敵忍者:う、後ろから……何がッ……!?
な……これは、先ほど投げた巨大な手裏剣……!?
藍丸:へっ、ご名答。
さすがのオイラも、雷遁の術はできねぇ。あれはハッタリさ。
才蔵:そうか、さっきの手裏剣が空中で弧(こ)を描いて戻ってきたのか!
藍丸:オイラは大車輪が戻ってくる位置を確認しながら、時間稼ぎをしてたんす。
最後に印を結んで詠唱したのも、タイミングを計るため。
不自然に間を取ったら、気づかれるかもしれないっすから。
敵忍者:敵ながら、見事なり……! う……ぐはぁッ……
藍丸:気を失ったみたいっすね。……才蔵さん、この人、里に連れて帰っていいすか?
深手ってわけじゃないし、治療すればまた任務もできるようになると思うんで。
才蔵:俺はかまわんが……里長がなんと言うかだな。
藍丸:父上に信頼されてる才蔵さんが頼めば、なんとかなりますよ。
才蔵:俺が頼むのかよっ! ったく……。
藍丸:いっつも迷惑ばっかりかけてすんません。
今回も、変わり身で酷い目に遭わせちゃって……。
才蔵:ほんとだよっ! 死ぬかと思ったぞ!
藍丸:へへ、すんません……。
才蔵:だが、まぁ……ちょっと嬉しかったがな。
藍丸:え?
才蔵:お前が俺に、いつも迷惑をかけていると思っているなんて……、
そんな自覚はないと思っていたからな。
カッコつけさせろと飛び出していったときは……フッ、驚いたぞ。
藍丸:ははっ……その後すぐに変わり身しちゃいましたけどね。
才蔵:まったくだ。ハハハハッ。
藍丸:アハハハッ……すんません。
才蔵:もう謝るな。
矢文で城主をしとめた件に比べたら、変わり身の件など、どうということはない。
藍丸:また失敗しちゃって……オイラ、もうダメっすかね……。
才蔵:そうだな……。切腹ものの失敗だ。
だが安心しろ。弟子の失敗は、師匠の責任。俺が腹を切って、それで済ませる。
藍丸:そ、そんな! 嫌ですよ! オイラの失敗だ! オイラが腹を切る!!
才蔵:藍丸……。しかし、他にどうせよと言うのだ?
俺もお前も腹を切らずに済ませる方法など……。
藍丸:誰かに罪を被せればいいんです。
才蔵:な、何を言うか。誰に被せるというのだ?
里の者の誰かにということか!? 藍丸、そんなことは……。
藍丸:忍術が使えて、あの時あの場で矢文を放つことができた者に被せればいいんです。
才蔵:我らの他には誰もいなかったではないか……。お前は一体なにを……。
藍丸:一人、候補者がいます。
才蔵:なっ……――誰だ!?
藍丸:……ふふっ。(藍丸、横たわった敵忍者を指さす)
才蔵:……あっ。
藍丸:才蔵さん、オイラ……催眠術が得意なんです。
才蔵:そ、そう、か……。あ、俺、すごい良く効く傷薬持ってるから、これ使ってやって。
藍丸:ありがとうございます。……それじゃ、この人治療して帰りましょうか。
才蔵:う、うむ。
藍丸:才蔵さん、忍びの道って、険しいですね……。
才蔵:そうだ。時には心を鬼にしなくてはならない。それが忍びの道よ。
藍丸:ウッス! これからも、よろしくお願いシャッス! ――師匠!
才蔵:うむ!
おわり
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